「このレンズでしか撮れない世界がある」XF50mm F1.0 R WR レビューと作例
本ブログをご覧頂きありがとうございます。
今回は半年ほど使用したXF50mm F1.0 R WRについて、レビュー記事をお届けしたいと思います。
fujiの中望遠単焦点は魅力的なものが多いので、悩まれている方の参考になれば幸いです。
ポートレート、スナップにもオススメのレンズ
結論
- このレンズでしか撮れない世界がある
- ロマンを追い求める方におすすめ
- 重くても描写優先!
スペックについて
XF50mm F1.0 R WRという商品名で、Rは絞りリング、WRは防塵防滴を指します。
主なスペックは下記します。
焦点距離 | 50mm(換算76mm) |
F値 | 1.0〜16 |
重さ | 845g |
最大径×長さ | 87mm×103.5mm |
フィルター径 | 77mm |
レンズ構成 | 9群12枚 |
絞り羽根枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 70cm |
最大撮影倍率 | 0.08倍(換算0.12倍) |
AFモーター | DCコアレスモーター |
まとめると、デカ重・寄れない・AFトラッキングも期待できない・そしてF1.0のレンズです。
強み
- F1.0である点
- ボケの美しさ
- 開放から程よくシャープに写る
- fujiの中望遠の中では1番広い、換算76mmという画角
- 強み×強み=このレンズでしか撮れない世界
F1.0であること
このレンズの強みは、ここに集約されます。
F1.0を活かしたボケ量。
浅い被写界深度を活かした視線誘導と、主題を浮き上がらせ伝える力。
そして光量が少ない状況でもSSを稼げる点。
このレンズはF1.0という名の表現力を備えておりまた、夜など光の少ない状況など撮影可能なフィールドを広げてくれます。


F1.0と2.8の比較です。
適当な被写体ですが、主題の浮き上がり具合が分かりやすいかと思い掲載しました。
これだけ離れていても、背景がボケるレベルの被写界深度の浅さが伝わるかと思います。
ボケの美しさ
F1.0と良くボケるレンズですが、そのボケが美しくなかったら台無しですよね。
ご安心ください、このレンズはしっとりした雰囲気を纏う極上のボケです。
うるさくなりがちな枝葉も溶かすようにぼかしてくれるので、うるさいと感じたことは有りません。
体感的にですがボケの美しさに定評のある、XF90mmF2すら超えていると感じるシチュエーションもあります。


ただし口径食は出ますので、気になる場合はF2くらいまで絞る必要があります。
ちなみに非球面レンズに付きものの玉ねぎボケは、とても抑えられている印象です。
研削方法に拘ったらしく、玉ボケを作りやすい本レンズでは嬉しいポイントです。

玉ねぎボケが出やすいイルミ光源ですが、目を凝らしても玉ねぎボケは見つけられません。
開放から程よくシャープ
F1.0の大口径ともなると、開放の描写に心配を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。
その点もこのレンズは抜かりなく、程よくシャープに写ります。
この程よくというのがミソで、僅かに収差を含んだ描写が開放の優しさに繋がっています。
開放はゆるゆるで定評のあるNOKTON 35mm F1.2と比較すると、雲泥の差の写り具合です。


必要十分なシャープネスがありますね。
換算76mmという焦点距離
fujiの数ある中望遠単焦点は、大体50mm〜90mmに分布しています。
その中で本レンズは最も広い50mm、換算76mmという画角を備えています。
つまりスナップにも使いやすい、背景を取り込みやすい、室内でも取りまわしやすいなどワーキングディスタンスのメリットが有ります。
また標準に近しい雰囲気を感じるような、見たままに近い自然な圧縮感も魅力です。
XF56mmとは換算で僅か9mm差で有りますが、この差は決して小さくは有りません。

F1.0×ボケの美しさ×開放の描写×換算76mm=このレンズでしか撮れない世界
このレンズの強みを個々に挙げましたが、本当の強みはその相乗効果で到達できる、このレンズでしか撮れない世界です。
換算76mmにF1.0の被写界深度が合わさり、中望遠の中では広めの画角ながら、主題を僅かな優しさを含みながらシャープに浮き上がらせる。
これがこのレンズの真骨頂ですね。

他のレンズを使用した際に、物足りなさを感じる瞬間があったら、このレンズの虜になっているかもしれません笑
実際銘玉と名高いXF90mmF2.0ですら、物足りなさを感じる瞬間がありました。
軽い、寄れる、写りも抜群と素晴らしいレンズなんですが、万能過ぎて突き抜け感が足りないと感じるんですよね・・・。

まさしく魔性のレンズ。
弱み
個性があって尖っている分、弱みも明確に有ります。
- 重い
- 寄れない
- 動体へのAFは不得意
- 口径食
- パープルフリンジ
- 色収差
- 非点収差
重い
XF単焦点で2番目に重い、845gもの重さを誇ります。
X-H2に付けると、それだけで1.5kgになるヘビー級です。
このレンズで撮れる世界を見たいが為に持ち出している状況で、正直軽快にとは言えません。
加えて重いが故に、持ち出すレンズにも制限が掛かるのも難点です。
いくらでもレンズを持ち歩ける体力と気力があれば良いのですが、疲れてしまいますので現実は何キロくらいまで、といった形で各々目安があるかと思います。
私は大体2〜3キロが限度かなと思っていますので、XF50mmF1.0で大体3〜4割の枠を取ることになってしまうわけです。
デカ重レンズの宿命かと思いますが、この排他的な点も欠点だと強く感じます。
ちなみに片手で持つには、H2クラスのグリップがあった方が持ちやすいです。
T4クラスは片手で握るのではなく、レンズを左手で支えて持つ感じになるかと思います。
寄れない
最大撮影倍率は0.08倍、最短撮影距離は70センチとクローズアップの撮影は不得意です。
特に草花を撮影する上で、最大撮影倍率の低さは足枷になります。
紫陽花、蓮など大きな花はまだ問題ありませんが、桜や梅などはクローズアップ出来ません。
ただ人を撮る場合、パーツのクローズアップなどをしない限りは充分撮影出来ますので、ポートレートを第一に考えたレンズ故の欠点だと感じます。

動体へのAF追従は不得意
リニアモーターではないので、動体へのAF追従は得意ではありません。
子供に使用していますが、向かってくるようなシチュエーションは特にピントを外しがちです。
動体は大人しくリニアモーター搭載のレンズを使用しましょう。
静物へのAFはリニアモーター搭載のレンズと比較してワンテンポ遅れる感じは有りますが、正確に合わせてくれます。
F1.0でAFを使用できることに感謝です。
ちなみにT4とH2では食いつきや歩留まりがかなり違うので、可能ならH2かH2Sでの使用をおすすめします。
大口径ゆえの弱点盛りだくさん
口径食、パープルフリンジ、非点収差、色収差など、大口径の欠点は出てしまいます。
口径食はF2.0まで絞れば真円になりますが、条件次第で少々の角張りが目につきます。


ごく僅かに角張ってるものもありますが、これは綺麗な方の作例です。

玉ボケがはっきり写ると角張りが誤魔化せないのかな?という印象です。
パープルフリンジはF2.8くらいまで絞ればあらかた解消します。
色収差もF2.8まで絞ればあらかた解消します。

ピント部拡大はこちら。


まだ残っています。

僅かに残っていますが、大体解消しました。

すっきりですが、ここまで絞るとズームレンズと変わらないF値になるのが難点ですね。
ここはF1.0のため、割り切りが必要だと思っています。
XF50mm F1.0を選ぶ理由
ロマンを追い求めて
fujiには魅力的な中望遠が数多くラインナップされていますね。
- XF50mm F2.0
- XF50mm F1.0
- XF56mm F1.2
- XF56mm F1.2 APD
- XF56mm F1.2 II
- XF60mm F2.4
- XF80mm F2.8
- XF90mm F2.0

書き出してみると、かなりの数ですね。
この中だとF値と焦点距離が近く、重さが約半分のXF56mm F1.2 IIが最大のライバルですね。
正直に言うと、XF50mm F1.0よりXF56mm F1.2 IIの方が万人にオススメできると思います。
開放からの写りは上、重さは約半分、さらに寄れると良いこと尽くしです。
それでもF1.0を選ぶ理由は「突き抜けた何かが欲しい」、これに尽きると思います。
このレンズはどのような世界を見せてくれるのか、そんなロマンを追い求めている感覚です。
作例

トリミングにて。
雨が降る薄暗い環境でしたが、水飛沫を止めるためにSSを稼ぎたい状況。
F2.8通しで1/75sしか確保できない光量下でも、本レンズはさらに3段分の余裕を持って撮影可能です。

夜のお祭りでも本領発揮します。


寄らなくてもボケ量が凄いので、寄らずに世界観を作れます。

何気ない写真も被写体が浮き上がります。

スナップに使用してみると分かるのですが、大変切り取りやすい画角です。

こちらはブラックミストを使用しています。








絞ってもこれだけボケます。

ハマると絵画的な写真が撮れたりします。



被写界深度の浅さで無理やり成立させた一枚だなと思います。

曇天の雰囲気まで捉えてくれました。


F2.8ズームではここまでまとまりません。
ちなみに旗の部分にパープルフリンジが出ていますね。

被写体と背景まで距離が無くてもすごい勢いでボケます。


絞ってもボケの美しさは維持されます。
適度に絞って、背景を何とかなくわかる程度に取り込むのも楽しいです。

風で枝が少し揺れていて光量も少ない状況でしたが、F1.0を活かしてSSを稼げました。
繰り返しになりますが、クラシックな写真に良く合います。




人慣れしたにゃんこなら撮れる画角。



絞ると立体感が増します。

手前の柱にピントを合わせていますが、後ろの建物はボケています。
このレンズだからこそできる、写真的な表現です。

夜スナップのお供にもいかがでしょう?



最低感度で撮影できた時はF1.0の有り難みを噛み締めました。


まとめ
- このレンズだから撮れる世界が確かにある
- 得意不得意がはっきりしている尖ったレンズ
- ロマン>重さの価値観の方におすすめ
作例をずらずら載せましたが、実際に撮影した写真は更に凄みと言いますか、空気感すら写す場合があります。
私イチオシレンズです。
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