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「このレンズでしか撮れない世界がある」XF50mm F1.0 R WR レビューと作例

2023年10月19日

本ブログをご覧頂きありがとうございます。

今回は半年ほど使用したXF50mm F1.0 R WRについて、レビュー記事をお届けしたいと思います。

fujiの中望遠単焦点は魅力的なものが多いので、悩まれている方の参考になれば幸いです。

ポートレート、スナップにもオススメのレンズ

結論

  • このレンズでしか撮れない世界がある
  • ロマンを追い求める方におすすめ
  • 重くても描写優先!

スペックについて

XF50mm F1.0 R WRという商品名で、Rは絞りリング、WRは防塵防滴を指します。
主なスペックは下記します。

焦点距離50mm(換算76mm)
F値1.0〜16
重さ845g
最大径×長さ87mm×103.5mm
フィルター径77mm
レンズ構成9群12枚
絞り羽根枚数9枚
最短撮影距離70cm
最大撮影倍率0.08倍(換算0.12倍)
AFモーターDCコアレスモーター

まとめると、デカ重・寄れない・AFトラッキングも期待できない・そしてF1.0のレンズです。

強み

  • F1.0である点
  • ボケの美しさ
  • 開放から程よくシャープに写る
  • fujiの中望遠の中では1番広い、換算76mmという画角
  • 強み×強み=このレンズでしか撮れない世界

F1.0であること

このレンズの強みは、ここに集約されます。

F1.0を活かしたボケ量。

浅い被写界深度を活かした視線誘導と、主題を浮き上がらせ伝える力。

そして光量が少ない状況でもSSを稼げる点。

このレンズはF1.0という名の表現力を備えておりまた、夜など光の少ない状況など撮影可能なフィールドを広げてくれます。

F1.0
F2.8

F1.0と2.8の比較です。
適当な被写体ですが、主題の浮き上がり具合が分かりやすいかと思い掲載しました。

これだけ離れていても、背景がボケるレベルの被写界深度の浅さが伝わるかと思います。

ボケの美しさ

F1.0と良くボケるレンズですが、そのボケが美しくなかったら台無しですよね。

ご安心ください、このレンズはしっとりした雰囲気を纏う極上のボケです。

うるさくなりがちな枝葉も溶かすようにぼかしてくれるので、うるさいと感じたことは有りません。

体感的にですがボケの美しさに定評のある、XF90mmF2すら超えていると感じるシチュエーションもあります。

溶けるようなボケに包まれた世界。
ドラマチックな雰囲気がよく合います。

ただし口径食は出ますので、気になる場合はF2くらいまで絞る必要があります。

ちなみに非球面レンズに付きものの玉ねぎボケは、とても抑えられている印象です。
研削方法に拘ったらしく、玉ボケを作りやすい本レンズでは嬉しいポイントです。

F1.1
玉ねぎボケが出やすいイルミ光源ですが、目を凝らしても玉ねぎボケは見つけられません。

開放から程よくシャープ

F1.0の大口径ともなると、開放の描写に心配を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。

その点もこのレンズは抜かりなく、程よくシャープに写ります。

この程よくというのがミソで、僅かに収差を含んだ描写が開放の優しさに繋がっています。

開放はゆるゆるで定評のあるNOKTON 35mm F1.2と比較すると、雲泥の差の写り具合です。

F1.0
上記画像の拡大です。
必要十分なシャープネスがありますね。

換算76mmという焦点距離

fujiの数ある中望遠単焦点は、大体50mm〜90mmに分布しています。
その中で本レンズは最も広い50mm、換算76mmという画角を備えています。

つまりスナップにも使いやすい、背景を取り込みやすい、室内でも取りまわしやすいなどワーキングディスタンスのメリットが有ります。

また標準に近しい雰囲気を感じるような、見たままに近い自然な圧縮感も魅力です。

XF56mmとは換算で僅か9mm差で有りますが、この差は決して小さくは有りません。

標準の延長線上で使用出来ます。

F1.0×ボケの美しさ×開放の描写×換算76mm=このレンズでしか撮れない世界

このレンズの強みを個々に挙げましたが、本当の強みはその相乗効果で到達できる、このレンズでしか撮れない世界です。

換算76mmにF1.0の被写界深度が合わさり、中望遠の中では広めの画角ながら、主題を僅かな優しさを含みながらシャープに浮き上がらせる。

これがこのレンズの真骨頂ですね。

他のXレンズではこの写真は撮れないと思います。

他のレンズを使用した際に、物足りなさを感じる瞬間があったら、このレンズの虜になっているかもしれません笑

実際銘玉と名高いXF90mmF2.0ですら、物足りなさを感じる瞬間がありました。
軽い、寄れる、写りも抜群と素晴らしいレンズなんですが、万能過ぎて突き抜け感が足りないと感じるんですよね・・・。

まさしく魔性のレンズ。

弱み

個性があって尖っている分、弱みも明確に有ります。

  • 重い
  • 寄れない
  • 動体へのAFは不得意
  • 口径食
  • パープルフリンジ
  • 色収差
  • 非点収差

重い

XF単焦点で2番目に重い、845gもの重さを誇ります。
X-H2に付けると、それだけで1.5kgになるヘビー級です。

このレンズで撮れる世界を見たいが為に持ち出している状況で、正直軽快にとは言えません。

加えて重いが故に、持ち出すレンズにも制限が掛かるのも難点です。
いくらでもレンズを持ち歩ける体力と気力があれば良いのですが、疲れてしまいますので現実は何キロくらいまで、といった形で各々目安があるかと思います。

私は大体2〜3キロが限度かなと思っていますので、XF50mmF1.0で大体3〜4割の枠を取ることになってしまうわけです。

デカ重レンズの宿命かと思いますが、この排他的な点も欠点だと強く感じます。

ちなみに片手で持つには、H2クラスのグリップがあった方が持ちやすいです。
T4クラスは片手で握るのではなく、レンズを左手で支えて持つ感じになるかと思います。

寄れない

最大撮影倍率は0.08倍、最短撮影距離は70センチとクローズアップの撮影は不得意です。

特に草花を撮影する上で、最大撮影倍率の低さは足枷になります。

紫陽花、蓮など大きな花はまだ問題ありませんが、桜や梅などはクローズアップ出来ません。

ただ人を撮る場合、パーツのクローズアップなどをしない限りは充分撮影出来ますので、ポートレートを第一に考えたレンズ故の欠点だと感じます。

一生懸命寄ってもこの程度です汗

動体へのAF追従は不得意

リニアモーターではないので、動体へのAF追従は得意ではありません。

子供に使用していますが、向かってくるようなシチュエーションは特にピントを外しがちです。

動体は大人しくリニアモーター搭載のレンズを使用しましょう。

静物へのAFはリニアモーター搭載のレンズと比較してワンテンポ遅れる感じは有りますが、正確に合わせてくれます。
F1.0でAFを使用できることに感謝です。

ちなみにT4とH2では食いつきや歩留まりがかなり違うので、可能ならH2かH2Sでの使用をおすすめします。

大口径ゆえの弱点盛りだくさん

口径食、パープルフリンジ、非点収差、色収差など、大口径の欠点は出てしまいます。

口径食はF2.0まで絞れば真円になりますが、条件次第で少々の角張りが目につきます。

F1.0
F2.0
ごく僅かに角張ってるものもありますが、これは綺麗な方の作例です。
同じF2.0ですが、こちらは角張っている印象。
玉ボケがはっきり写ると角張りが誤魔化せないのかな?という印象です。

パープルフリンジはF2.8くらいまで絞ればあらかた解消します。

色収差もF2.8まで絞ればあらかた解消します。

F1.0

ピント部拡大はこちら。

F1.0
F1.4
まだ残っています。
F2.0
僅かに残っていますが、大体解消しました。
F2.8
すっきりですが、ここまで絞るとズームレンズと変わらないF値になるのが難点ですね。

ここはF1.0のため、割り切りが必要だと思っています。

XF50mm F1.0を選ぶ理由

ロマンを追い求めて

fujiには魅力的な中望遠が数多くラインナップされていますね。

  • XF50mm F2.0
  • XF50mm F1.0
  • XF56mm F1.2
  • XF56mm F1.2 APD
  • XF56mm F1.2 II
  • XF60mm F2.4
  • XF80mm F2.8
  • XF90mm F2.0

書き出してみると、かなりの数ですね。

この中だとF値と焦点距離が近く、重さが約半分のXF56mm F1.2 IIが最大のライバルですね。

正直に言うと、XF50mm F1.0よりXF56mm F1.2 IIの方が万人にオススメできると思います。

開放からの写りは上、重さは約半分、さらに寄れると良いこと尽くしです。

それでもF1.0を選ぶ理由は「突き抜けた何かが欲しい」、これに尽きると思います。

このレンズはどのような世界を見せてくれるのか、そんなロマンを追い求めている感覚です。

作例

F1.0 -0.3ev iso250 1/600s

トリミングにて。

雨が降る薄暗い環境でしたが、水飛沫を止めるためにSSを稼ぎたい状況。
F2.8通しで1/75sしか確保できない光量下でも、本レンズはさらに3段分の余裕を持って撮影可能です。

F1.0 -0.3ev iso2500 1/60s

夜のお祭りでも本領発揮します。

F1.0 0ev iso320 1/5,800s
F1.0 0ev iso160 1/400s

寄らなくてもボケ量が凄いので、寄らずに世界観を作れます。

F1.0 0ev iso160 1/1100s

何気ない写真も被写体が浮き上がります。

F1.0 0ev iso160 1/1000s

スナップに使用してみると分かるのですが、大変切り取りやすい画角です。

F1.0 +1.7ev iso640 1/9000s

こちらはブラックミストを使用しています。

F1.0 0ev iso320 1/750s
F1.0 +1ev iso320 1/550s
F1.0 +0.3ev iso320 1/1500s
F1.0 0ev iso320 1/3,800s
F1.0 0ev iso160 1/150s
F1.0 0ev iso160 1/550s
F1.0 0ev iso160 1/280s
F2.8 0ev iso160 1/150s

絞ってもこれだけボケます。

F1.0 -1.3ev iso160 1/12000s

ハマると絵画的な写真が撮れたりします。

F1.4 0ev iso160 1/1800s
F1.0 0ev iso160 1/1100s
F1.0 0ev iso160 1/15s

被写界深度の浅さで無理やり成立させた一枚だなと思います。

F1.0 0ev iso160 1/15s

曇天の雰囲気まで捉えてくれました。

F1.0 0ev iso320 1/60s
F1.0 -0.3ev iso160 1/1,600s

F2.8ズームではここまでまとまりません。
ちなみに旗の部分にパープルフリンジが出ていますね。

F1.0 0ev iso160 1/2,900s

被写体と背景まで距離が無くてもすごい勢いでボケます。

F1.0 0ev iso250 1/950
F2.0 -0.3ev iso250 1/400s

絞ってもボケの美しさは維持されます。
適度に絞って、背景を何とかなくわかる程度に取り込むのも楽しいです。

F1.0 -0.7ev iso500 1/500s

風で枝が少し揺れていて光量も少ない状況でしたが、F1.0を活かしてSSを稼げました。

繰り返しになりますが、クラシックな写真に良く合います。

F1.0 +0.7ev iso250 1/750
F1.0 -0.3ev iso160 1/450s
F1.0 0ev iso250 1/125s
F1.0 0ev iso160 1/1,400s

人慣れしたにゃんこなら撮れる画角。

F1.0 -0.3ev iso160 1/125s
F1.0 -0.3ev iso160 1/120s
F2.0 +0.3ev iso500 1/250s

絞ると立体感が増します。

F1.0 -0.7ev iso500 1/400s

手前の柱にピントを合わせていますが、後ろの建物はボケています。
このレンズだからこそできる、写真的な表現です。

F1.0 -1ev iso125 1/20s

夜スナップのお供にもいかがでしょう?

F1.0 +0.7ev iso125 1/30s
F1.0 0ev iso250 1/125s
F1.0 0ev iso160 1/17s

最低感度で撮影できた時はF1.0の有り難みを噛み締めました。

F1.0 -0.3ev iso125 1/900s
F2.8 0ev iso125 1/40s

まとめ

  • このレンズだから撮れる世界が確かにある
  • 得意不得意がはっきりしている尖ったレンズ
  • ロマン>重さの価値観の方におすすめ

作例をずらずら載せましたが、実際に撮影した写真は更に凄みと言いますか、空気感すら写す場合があります。

私イチオシレンズです。